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それは文庫本の常識を超えた分厚さゆえに「レンガ本」などといわれます。
とはいっても基本的に1冊完結なので、司馬遼太郎著書や北方謙三著書のような超長編ではありません。
このシリーズの第1作「姑獲鳥の夏」から第4作「鉄鼠の檻」まで読みました。
このシリーズの舞台は昭和20年代。
古本屋を営む変わり者中善寺秋彦(通称京極堂)、内気な作家の関口、変人探偵の榎木津、頑固刑事の木場など、個性的なキャラが毎回登場し、ユーモアを交えながら事件を解決していきます。
レトロムードがたっぷりで、最初は横溝正史氏あたりと同時期の作家かと思いましたが、今も現役の人です。
次から次へと出てくるいろいろな謎、不可解な事件。
しかし・・・
「この世には不思議なことなど何もないのだよ、関口君」
「姑獲鳥の夏」
シリーズ1作目。
ある病院を舞台にした失踪事件と妊娠20ヶ月の女、これらの謎に後の名キャラクターたちが挑みます。
内容は非常に心理的なもので、物の見方に特徴があり、「なるほど、そういう考え方もあるのか」とわかったようなよくわからないようなものでした。
「魍魎の匣」
魍魎とハコがテーマになっていて、それにいろいろな事件が付きまといます。
それらが後半次々と繋がっていく様は圧巻です。
京極堂と仲間達は今回も健在で、元々は無関係でありながらも事件にどんどん絡んできてしまいます。
4作品読んだ中では、これが一番面白かったです。
ただし、これの実写映画版はダメ。
これほどつまらない映画も珍しいほどでした。
「狂骨の夢」
このシリーズらしく、複雑な展開とそれを1本にまとめる閉め方はさすがだと思います。
それに、ここから登場する伊佐間のキャラクターや朱美の設定など、なかなか面白いと思います。
ただ、あまりに宗教、夢、心理学、空想に関わることが多すぎて読むのがしんどかったです。
後半、京極道の推理回答シーンも、薀蓄が多すぎて少々ウンザリしました。
でもストーリーそのものは楽しめたかな。
「鉄鼠の檻」
今回は仏教や禅をテーマにした作品で、いつものことながら宗教の薀蓄満載です。
他の京極堂シリーズに比べると前半は取っ付きやすい印象ですが、途中から宗教専門用語がバンバン出てくるいつもの調子になり、少々難しいです。
箱根の山中で起こった連続僧侶殺人事件、このシリーズの好きな方にはお勧め。
ただ持ち歩くには、1300ページを超える分厚さは限界だと思います。
今日は4月27日、というわけで江戸川乱歩の傑作短編「押絵と旅する男」を読みました。
この作品はたった30ページほどの短編でありながら、乱歩文学の「狂」と「美」をしっかり味わうことが出来る名作です。
簡単にストーリーを紹介します。
「私」は蜃気楼を見に行った帰りの汽車の中で、一人の老人と遭遇します。
その老人は額を大事そうに抱えていて、「私」はその額を見せてもらうことになりました。
そこには白髪の老人と綺麗な少女が押絵細工で描かれているのですが、驚くほど精巧に出来ていて、まるで生きてるように見えるのです。
老人はそこに描かれた男女の身の上話を語ります。
あれは30年も前のこと、自分の兄が恋わずらいですっかり元気がなくなり、ご飯もろくに食べず、とても悩んでいる様子でした。
どうも展望台から望遠鏡をのぞいていたとき、偶然その少女を見かけて、それ以来ずっとずっとその少女を探しているとのこと。
自分は兄と一緒に少女を探しました。
そして4月27日、ついに少女を探し当てるのですが、なんとそれは生身の人間ではなく、よく出来た押絵細工だったのです。
「たとえこの娘さんがこしらえものの押絵だとわかっていても、私はどうもあきらめられない。たった一度でいい、私も押絵の中の男になって、この娘さんと話がしてみたい」
この兄の思いがあまりにも強く、あまりにも愛してしまったため、奇跡がおこります。
兄は押絵の中の娘に恋焦がれたあまり、押絵の中に入ってしまい嬉しそうに娘さんと寄り添っていたのです。
自分は嬉しくなり、その押絵を買い求め、兄たちを新婚旅行に連れて行ったのでした。
これでメデタシ、メデタシ・・・とならないのが、この物語の凄いところでして・・・
汽車の中、老人の語りは続きます。
今日は久しぶりに東京の街を見せてやろうと思い、兄達の入った押絵を持ち出したのです。
30年の月日がたった今、少女は元々作り物だったため、当時のままです。
しかし悲しいことに、兄は元は人間だったためすっかり年老いてしまって、髪の毛もすっかり白髪に成り果てたのでした。
よく見ると兄はなんとも悲しそうな、悲痛な表情をしていたのでした。
そして改めて語っている老人を見ると、不思議なことに押絵の中の老人と瓜二つだったのでした。
ここでいう「兄」は幸せだったのでしょうか?
そりゃ、恋焦がれた娘とたった一度どころか、30年もの月日を一緒に過ごしたので幸せでしょう。
しかし人間は欲が出るのです。
長年寄り添った娘と、このまま永遠に一緒にいたいと思うのです。
それでも永遠の愛なんてなく、夢のような月日にピリオドを打つときがやってくる、その現実を受け止めなければならないのです。
長すぎた夢は、その分悲しみも大きいのでした。
そして兄と瓜二つの老人は、兄の人生と悲しみまで背負って旅を続けるのでした。
面白いです。
気軽に読めるし、笑えるし、読書が楽しいです。
というわけで、ここ最近読んだ奥田作品の紹介です。
「サウスバウンド」
過激派の両親とその子供達の話。
成田闘争の英雄で、その界隈では有名人の父は、そのまっすぐ過ぎる性格ゆえにあちこちで騒動ばかり起こすのですが、そのハチャメチャぶりが面白くおかしく描かれているコメディ小説です。
沖縄へ移住してからの話はちょっとベタな気もしますが、最後はいちおうハッピーエンドです。
いろいろな左翼用語も出てきて、ちょっと勉強になりました。
「イン・ザ・プール」
現代病ともいえるいろいろな心の病を持つ人たち。
マジメ過ぎたり、頑張りすぎが災いして日常生活にも支障を感じるほど追い詰められていくのですが、変人精神科医のおかげで結果としては完治してしまいます。
この変人精神科医の伊良部と愛想の欠片もないセクシー看護婦マユミのキャラが面白すぎます。
ほとんどマンガ感覚で読めるコメディですが、実はけっこう深いような気がします。
続編も出てるので読みたいです。
「東京物語」
おそらく奥田氏自信のことを書いたと思われる自伝的小説。
主人公は私より一回り以上年上になりますが、80年代の社会、流行、ヒット曲などとても懐かしく感じました。
名古屋出身の若者が東京で過ごした80年代の青春物語。
ただ、あまりにも日常的すぎて小説としてはちょっと退屈な気もします。
「真夜中のマーチ」
肩肘張らずに読める大衆娯楽小説です。
ミタゾウ、ヨコケン、クロチェの25歳トリオが大胆な10億円強奪に挑戦するドタバタコメディで、軽いノリで読めます。
このまま映像化しても楽しめそうです。
「延長戦に入りました」
スポーツに関するエッセイ集です。
どれも日常のささやかな疑問から、作者なりの少しズレた視点からの回答。
34のエッセイはどれも面白く、ユーモアあふれる文章センスで、とくに関心のなかったスポーツ(ハンドボールやゴルフ)の内容でも楽しめました。
「港町食堂」
港町で入った食堂やスナック、人々とのふれあいをテーマにしたエッセイ集です。
車や電車で行けばすぐにつくのに、わざわざ船に乗って港へ行くというバカバカしさ、有り余る時間をたっぷりムダに使う贅沢、美味しい食事、普通の会社員には出来ない旅を奥田氏ならではのユーモア溢れる文章で読ませてくれます。
おそらく著者は左よりの思想だと思うのですが、資本主義社会に対するアンチテーゼのようにも感じられます。
私が奥田英郎さんの本を手にしたのはこれが初めてでしたが、そのとき以来奥田作品ばかり読んでます。
「最悪」
町工場のオヤジ、銀行員のOL、街のチンピラ、という接点のない3人が、それぞれささいなことから歯車が狂い、どんどん転落していって最悪の事態に陥る、最後は取り返しのつかないことになってしまいます。
現実感があり、とくに町工場のオヤジなんてリアリティがありすぎて、読んでて苦しくなってきます。
しかし3人が交わるところから、リアルすぎる現実感が薄くなり、小説的展開になって精神的に読みやすくなりました。
私が奥田著書にはまるきっかけになった本です。
「邪魔」
人間の弱さがリアルに描けてる物語だと思いました。
口では強いことを言ってても、世間の目、最愛の人を亡くした悲しみ、暴力、組織には逆らえない。
そしてどんどん坂を転げ落ちてしまう…。
たいていの小説は、結局は「悪は裁かれ、善は報われる」のですが、この小説は違います。
「こう来たか…」と思ってしまうラストは悲しいです。
「ウランバーナの森」
休業中のジョン・レノンが軽井沢に来てたことを題材にしたお話。
便秘に苦しむジョンが不思議な医者へ行き、不思議な体験をするのです。
ハンブルグ時代のことを思い出したり(ここで登場するのはポールやジョージではなくピーターってのがマニアックです)、なぜかキース・ムーンまで出てきます。
面白いと言えば面白いのかもしれませんが、小説としては今ひとつだと思います。
「マドンナ」
40代中間管理職の日常を描いた短編集です。
殺人とか誘拐とか暴力と縁のない、普通のサラリーマンやOLの何気ない日常のちょっとした事件、苦悩がリアリティたっぷりに書かれていて、「うん、あるある」と膝を叩くような話。
気軽に読めてそれなりに面白かったと思います。
「ララピポ」
ダメ人間、というより世の中の裏側で生きてる人達の人間ドラマです。
全体的に風俗関係中心の内容なのですが、人間の弱い部分がリアルに、そしてユーモアたっぷりに描かれていて面白いです。
社会の底辺、といっては失礼ですが、それでも人は一生懸命に生きてるというのが伝わります。
映画化されたようなのですが、レンタルで借りて見てみたいです。
「しゃぼん玉」
たまたま本屋で手にして、乃南アサ作品を読むようになったきっかけです。
ろくでなし人生を歩んでいた青年が、逃避行のすえにたどり着いたド田舎で老人達と暮らし、心を入れ変えるという物語。
人と人の繋がり、思いやり、お金で買えない幸せなど、いろいろ考えさせられました。
今の大不況の時代、心の栄養が欲しい人は是非!
「不発弾」
今年の課題でもある短編集です。
私はあまり短編集は読まないのですが、行き着けの本屋に乃南アサ著書がこれしかなかったので。
やはりこの人は文章が上手いと思います。
はっきり言ってどれもストーリーは大したことありません。
でもこれだけ引き込ませるのは凄いことだと思います。
これでもっとストーリーが良ければ…。
やはり長編を読みたいです。
「鎖」
女刑事音道貴子のシリーズが人気とのことなので、たまたま手にしたのが本書でした。
事件を追っているうちに自分が事件に巻き込まれてしまい、人質になってしまう。
追い詰められた人間の心理状態が、とても鮮明に描かれており、まるで作者は人質の経験があるのでは?って思ってしまうほどです。
読みやすくどんどんストーリーにはまっていく作品でした。
「凍える牙」
なかなか面白かったと思います。
主人公はシリーズ化されている音道さん。
でも個人的に音道さんみたいな人は苦手です。
主人公に感情移入出来ないと、いくらストーリーや文章が優れていてもあまり好評価にならないかも。
時限発火装置や狼犬を使った犯罪、男社会の中の女性の立場など、視点はいいと思います。
「涙」
これは、はまりました。
気がつくと上巻が終わり、下巻を読み始めたらラストシーンになってしまいました。
簡単に言えば、結婚式前に婚約者が謎を残して失踪、それを追う女、という話です。
ミステリーらしく殺人事件あり、刑事あり、謎あり、なんですが、それ以上に恋愛小説です。
主人公達2人の愛だけでなく、いろいろな愛が絡み、それが人を助け、あるいは人を傷つけるのすが、そこは乃南さんの文章力によりとても深い、読み応えのある作品に仕上がってるのでした。
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