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今日は4月27日、というわけで江戸川乱歩の傑作短編「押絵と旅する男」を読みました。
この作品はたった30ページほどの短編でありながら、乱歩文学の「狂」と「美」をしっかり味わうことが出来る名作です。
簡単にストーリーを紹介します。
「私」は蜃気楼を見に行った帰りの汽車の中で、一人の老人と遭遇します。
その老人は額を大事そうに抱えていて、「私」はその額を見せてもらうことになりました。
そこには白髪の老人と綺麗な少女が押絵細工で描かれているのですが、驚くほど精巧に出来ていて、まるで生きてるように見えるのです。
老人はそこに描かれた男女の身の上話を語ります。
あれは30年も前のこと、自分の兄が恋わずらいですっかり元気がなくなり、ご飯もろくに食べず、とても悩んでいる様子でした。
どうも展望台から望遠鏡をのぞいていたとき、偶然その少女を見かけて、それ以来ずっとずっとその少女を探しているとのこと。
自分は兄と一緒に少女を探しました。
そして4月27日、ついに少女を探し当てるのですが、なんとそれは生身の人間ではなく、よく出来た押絵細工だったのです。
「たとえこの娘さんがこしらえものの押絵だとわかっていても、私はどうもあきらめられない。たった一度でいい、私も押絵の中の男になって、この娘さんと話がしてみたい」
この兄の思いがあまりにも強く、あまりにも愛してしまったため、奇跡がおこります。
兄は押絵の中の娘に恋焦がれたあまり、押絵の中に入ってしまい嬉しそうに娘さんと寄り添っていたのです。
自分は嬉しくなり、その押絵を買い求め、兄たちを新婚旅行に連れて行ったのでした。
これでメデタシ、メデタシ・・・とならないのが、この物語の凄いところでして・・・
汽車の中、老人の語りは続きます。
今日は久しぶりに東京の街を見せてやろうと思い、兄達の入った押絵を持ち出したのです。
30年の月日がたった今、少女は元々作り物だったため、当時のままです。
しかし悲しいことに、兄は元は人間だったためすっかり年老いてしまって、髪の毛もすっかり白髪に成り果てたのでした。
よく見ると兄はなんとも悲しそうな、悲痛な表情をしていたのでした。
そして改めて語っている老人を見ると、不思議なことに押絵の中の老人と瓜二つだったのでした。
ここでいう「兄」は幸せだったのでしょうか?
そりゃ、恋焦がれた娘とたった一度どころか、30年もの月日を一緒に過ごしたので幸せでしょう。
しかし人間は欲が出るのです。
長年寄り添った娘と、このまま永遠に一緒にいたいと思うのです。
それでも永遠の愛なんてなく、夢のような月日にピリオドを打つときがやってくる、その現実を受け止めなければならないのです。
長すぎた夢は、その分悲しみも大きいのでした。
そして兄と瓜二つの老人は、兄の人生と悲しみまで背負って旅を続けるのでした。
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