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洋楽名盤紹介と日々の雑談を書いてます
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第31回名盤シリーズ
ホワイト・スネイクが苦労して作り上げた作品「スライド・イット・イン」
(1983年作品)



10代半ば頃、ホワイトスネイクはベスト盤を聴いて、それまでの代表曲はだいたい聴いていた。
そして、次のニューアルバムの製作は難航しているとの情報がミュージック・ライフ誌に報じられていた。
いろいろな人間関係の問題などが山積みらしい。
その後発売されたこのアルバム、発売と同時に聴いたのだが、かなり気に入ったアルバムで、それが今回紹介する「スライド・イット・イン」だ。

このアルバムには、古き良きホワイトスネイクの味わいが残っている。
次の「サーペンス・アルバス」のようなキャッチーで売れ線な曲はなく、初期ホワイトスネイクが持っていたブルージーで泥臭い雰囲気が残ってるのだ。
ツインギターバンドでありながら、あくまでもデビッド・カバーデイルのボーカルを引き立てるためのもの。
同時期のLAメタルとはまるで違うサウンドで、ブリティッシュ・ロック臭さが漂う大人のハード・ロック。
ギターはミッキー・ムーディーとメル・ギャレーという渋いメンバーなのだが、私はホワイトスネイクにスーパーギタリストは必要ないと思う。
いや、ミッキーもメルも上手さに関しては折り紙付きなのだが。
派手なジョン・サイクスや後のヴィヴィアン・キャンベル、エイドリアン・ヴァンデンヴァーグ、スティーヴ・ヴァイなど、スター性のあるギタリストを迎えた作品は、成功を手にした代わりに失ったものも多いと思う。

1曲目の「ギャンブラー」、名作を予感させるかっこいいスタートだ。
渋カッコイイ曲で、控えめなギター・ソロもいい。
このアルバムでもう1曲一押しは、「孤独の影」。
地味だが、役割分担のはっきりしたツインギターに、これまたソウルフルなカバーデイルのボーカル。
ギターの音がハードロック然としていないのも、このアルバムらしくていい。
間奏のギターソロも必要最小限の音数で、80年代ギターテクニカル競争の時代に珍しいくらい味で勝負のプレイだ。
その後の渋すぎるボーカルも大人っぽくて好きだった。

その後、アメリカ向けにミックスされたバージョンが発売される。
ギターがジョン・サイクスに差し替えられ、このブリティッシュな雰囲気は封印されてしまうのだった。


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第30回名盤シリーズ
今回取り上げるのはギター革命児ジミヘンの「エレクトリック・レディ・ランド」である。
(1968年作品)



私はまだまだジミヘンを理解しているとは言いがたく、今も取っ付き難い人である。
ギタリストの間で、ジミヘンは大変評価が高く、神の域にまで達している感があるが、自分自身ギターを弾くにもかかわらず、理解が難しいのだ。

私が初めて買ったジミヘンは、彼の死後に発売された「クライ・オブ・ラブ」というアルバム。
何でこのアルバムかっていうと、行き着けのレコード屋さんにこれしかなかったからだ。
そして、物凄いギタープレイを期待して聴いたのだが、思いっきり肩透かしを食らった。
じっくり聴くと曲の質はいいのだが、自分には大人しすぎるアルバムだったからである。

でもこのアルバムは違う。
1968年に2枚組LPとして発表された本作は、しっかり素晴らしいギター・プレイが満載で聴き応えたっぷりだ。
曲も良く、彼のソングライターとしての力も発揮されている。
なかでも「Burning of the Midnight Lamp 」はメロディメーカーとしても、優れたものを持っていたことがよくわかる曲だと思う。
また「1983…」の予想のつかない展開はプログレ的で、中間部の混沌とした感じはまるでアイランド期のクリムゾンみたいだ。

渋いギターを楽しむならこの曲、「Voodoo Chile」だ。
それも有名なスライトリターンじゃなく、4曲目のスローブルースのほう。
ブルースマンとしてのジミの実力が発揮された曲だと思う。
ヘヴィなリズムをバックに決して音数が多いわけではないのに、激しくエモーショナルなギターを聴かせてくれる。
ここで聴けるギターは彼の魂そのもののような気がするのだ。
絶妙なチョーキングビブラートとトリルを絡ませたギターを聴いて「これがジミヘンのギターか!」と納得した。

攻撃的なギターを聴くなら「Voodoo Chile」のスライトリターンのほう。
暴力的ともいえる凄まじいソロが聴けるが、途中の副音をトレモロピッキングでかき鳴らすところはスゴイの一言だ。
残念ながらもっと聴きたいのにスタジオバージョンはすぐにフェイドアウトしてしまう。
その分ライブだと10分くらいソロを弾いてくれるのだが。

また、ソロだけでなくリフメイカーとしても個性的なジミヘン。
2曲目「Have You Ever Been 」で聴けるコードにトリルを絡ませるリフや、「Crosstown Traffic」でのコードと単音を組み合わせたリフなどジミヘンのリフ構成の特徴が現れている。
そしてもう一つの重要な特徴であるワウを効かせたリフ。
これは「Voodoo Chile」のスライトリターンのほうで聴くことが出来る。
ここで聴けるボーカルメロディとリフを同期させるパターンもジミヘン独自のものだ。

後に多くのギタリスト、いや全てのギタリストに大きな影響を与えたジミヘン。
短い活動期間中に思いっきり才能を凝縮させて早死するが、彼の残した遺産は永遠の輝きを放つことだろう。



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第29回ロック名盤シリーズ
今回取り上げるのはフリー「フリー・ライブ!」。
(1971年作品)



解散直前の1971年に発売されたフリー初のライブ・アルバムだ。
当初は8曲しか入ってなかったようだが、今発売されてるものは、ボーナストラックが入った15曲入り。
ジャケットは上部にメンバーの切手を貼ったみたいなお洒落なデザインだが、人相は極悪だ。

同時期のZEPと同じブリティッシュ・ブルース・ロックの匂い。
これが最初に聴いたときの第一印象である。
ロック・バンドとして必要最小限のユニットであるトリオ演奏。
当然ライブでもサポート・メンバーなしで、3人+ボーカルだけで演奏を行う。
すぐに多くのサポート・メンバーを加えてレコードと出来るだけ同じ音を出そうとするバンドもあるが、ロックバンドたるものメンバーだけで演奏するのが当然だ。
人数が多ければ何でも出来る。
それをバンド・メンバーだけで工夫してライブ・パフォーマンスを行ってこそロック・バンドなのだ。

隙間だらけのサウンド。
しかし薄っぺらさはない。
演奏の強弱をピッキングの強さやドラムを叩く強さで調整し、ここぞというところでバーンと力いっぱい演奏することで爆発力を表現しているからだ。
決してテクニカル集団ではないが、4人が精一杯の力を出し切って演奏しているので気迫が感じられる。

このブルースを基調としたサウンドに花を添えているのが、ポール・コゾフのギターだ。
振れスピードの細かい、ビブラートを中心としたフレーズ展開で、速弾きはほとんどない。
スケールは主にペンタトニックを使ったオーソドックスなもので、味わい深いプレイがファンの多さを納得させる。
7曲目「The Hunter」での迫力ある長いソロプレイ、9曲目「Woman」での殺気立ったプレイなど聴き所は満載だ。

このバンドのブルースを最も楽しめるのは11曲目「Moonshine」だろう。
20歳そこそこの若者が演奏してるとは思えない、人生の酸いも甘いも知り尽くしたかのような熟したプレイ。
ここでのコゾフは、哀愁溢れる魂の叫びのようなギターソロを奏で、ベースも力づくでプレイしているのがよくわかる。
3曲目の「Be My Friend」もとても味わい深いプレイで、ロジャースのソウルフルなボーカルが楽しめる。

バンド・アンサンブルが素晴らしいのは「Mr.Big」だ。
このアルバムには2テイク入っているが、どちらも甲乙付けがたい魅力がある。
曲の後半のベースソロはとてつもなくカッコいい。
こうしたトリオ演奏の理想の一つといえるだろう。


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第28回名盤シリーズ
今回取り上げるのはヘヴィ・メタルの神ジューダス・プリースト「復讐の叫び」
(1982年作品)



1982年に発表されたこのアルバムは「ヘヴィ・メタルの教科書」とも言われる作品で、後の多くのヘヴィ・メタル・バンドに大きな影響を与えた。
表題の「復讐」(原題はScreaming For Vengeance)とは何に対してなのだろう?
前作「ポイント・オブ・エントリー」の評価がそれほどでもなく「問題作」とされたのに対しての「復讐」だとも言われている。
ただ、アメリカ市場での評価は悪くはなかったようだが。

メンバーはロブ・ハルフォード(vo)、グレンティプトン(g)、K・K・ダウニング(g)、イアン・ヒル(b)、デイブ・ホーランド(ds)。
これが黄金期のメンバーである。
このメンバーによって繰り出される重くメタリックなサウンドは、まさに「ジューダス・プリーストここにあり!」と言わんばかりで、とても堂々としたものだった。

アルバムの冒頭を飾るのは、その後のヘヴィ・メタル界の金字塔ともなった「ヘリオン~エレクトリック・アイ」だ。
今聴いても充分インパクトのあるサウンド。
そして間髪いれずに始まるリフ、まさにヘヴィメタの様式美である。
アルバムのオープニングは、一つの形式として完成させており、後の多くのバンドに影響を与えた。
またライブのオープニングとしてもピッタリで、昨年の来日公演でもオープニングがこれだった。

ほとんどの曲が彼らのオリジナルだが、唯一のカバー曲が「チェインズ」。
彼らのカバー曲はどれもセンスがよく、いつもいい曲を選んでいると思う。

このアルバム中最もハードでスラッシュな曲が表題曲「復讐の叫び」だ。
ここで聴けるロブの鬼のようなシャウト、スピード感溢れるリフ、速いテンポ、どれもが最高で10代の頃はこの曲ばかり繰り返し聴いたものだ。
この曲のツインリードギターがまた素晴らしい。
K・Kのギターソロ、そしてグレンのギターソロ、そしてハーモニー…ここでのハーモニーはすごく複雑に絡んでいて単に低音、高音に分かれてるわけではない。
その2本のギターが奏でるハーモニーはクラシカルに絡み合いながらヘヴィメタの王道を突き進むのだった。

このアルバムは出来るかぎりの大音量で聴きたい。
家の窓を閉め切って許される範囲での最大ボリューム、車なら安全を確保して目一杯ボリュームを上げて聴くべきだ。
そうするとこのアルバムが、なぜヘヴィ・メタルの教科書なのかが自然と理解出来るものと思われる。



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第27回名盤シリーズ
今回はカンタベリー・ロックの大御所キャラバンの「グレイとピンクの地」。
(1971年作品)



今回取り上げるアルバムは他のアルバムのように数百万枚売れたとか、全米No.1になったアルバムではない。
地味にゴールドディスクは取得しているが、一般的には知られていないアルバムかもしれない。
しかし、カンタベリー・ロックを語る上で欠かせないアルバムであり、今もマニアを中心に根強いファンがいるのも事実だ。

71年に発表されたこのアルバムはキャラバンの2枚目のアルバムで、メンバーはパイ・ヘイスティング(g、vo)、リチャード・シンクレア(b、vo)、デヴィッド・シンクレア(key)、リチャード・コフラン(ds)だ。
他にゲストとしてジミー・ヘイスティング、デヴィッド・グリンステッド、などが参加している。

作品は非常に親しみ易くポップな曲と、長いインストパートが続く演奏重視の難解な曲の2つの面がある。
ポップな面については旧LP時代のA面がそれに当たる。

トロンボーンを使ったなんともホノボノとしたイントロで始まるゴルフ・ガール。
天気の良い暇な午後の休日に、ノンビリとゴルフを楽しむ風景が広がるような曲だ。
リチャードの押さえたボーカルがとてもいい雰囲気を醸し出しており、アコースティックなサウンドとフルートがさらにノホホンとしたイメージを形作っている。
サビのメロディを聴くと、ポップでホノボノしていても、少しスパイスが効いてる感じがするのが面白い。

4曲目の表題曲も同じくホノボノ路線の曲。
ゆったり心地よいリズムで、リチャードが得意の低音ボーカルを聴かせる。
ここでの彼のボーカル・スタイルは完全に彼独自のもので、「グビュドゥビドゥブブブブビヴゥヴ~~」と文字で表現出来ないような歌い方。
彼はこれを自分のスタイルとしているようで、キャラバン脱退後のハットフィールド&ザ・ノースでもこの歌い方をしている。
ただ、あまり成功しているように思えないのだが。
この曲も、微妙に変拍子を使ったりしてただのポップ・ソングにはなっていない。

インストパートを重視したのは、旧LPのB面全てを使った22分におよぶ「9フィートのアンダーグラウンド」だ。
歪んだ独特のオルガンサウンドで前半をひっぱる。
決してクリムゾンやイエスのように緊張感溢れるサウンドではなく、あくまでもゆったりと聴かせてくれるのが彼らの特徴だ。
途中からサックスも入って、ジャズロック風のカラーを推し進めていく。
前半のボーカルを決めるのはパイ・ヘイスティングの高音ボーカル、リチャードとは違った味がある。
その後、静かなパートに入り大砲の音ともに曲調が一変、ゆったりした雰囲気はなくなり、シリアスな方向へ。
リチャードの暗いボーカルが入るとさらに曲はダークで物悲しいイメージに統一され、次のキメのパートへ繋がる。
最後はテンポも速くなって終了、ジャケで表されているピンクの世界の旅は終わる。

現在のCDではボーナストラックが5曲入っていて、「ゴルフ・ガール」の前身「グループ・ガール」や、パイの魅力的なギターソロが聴ける「9フィート~」のヴァージョン違いなどが聴けてお買い得である。



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