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第81回名盤シリーズ
今回は異色のロックトリオ、トラピーズ。
(1972年作品)
グレン・ヒューズ、メル・ギャレー、デイブ・ホーランド、いずれもロック・ファンに名の知れたミュージシャンだが、どちらかというとトラピーズ以降の活躍のほうが有名かもしれない。
それでもこのアルバムは魅力を放っている。
3人がそれぞれ力を出し切って、後の大物バンドよりも自分の持ち味を発揮してるような気がするからだ。
この手のロック・トリオが演奏するのは、たいてい黒人音楽の影響が強いものだが、彼らの音楽にも思いっきりブラック・ミュージックのエッセンスが入っている。
この3人の演奏レベルの高さには定評があるが、それでも演奏主体ではなくボーカル中心のアルバムになっていて、やはりグレンのソウルフルなボーカルが一番の聴き所となっている。
彼が後に加入したバンドのアルバムでは、ディープ・パープル「カム・テイスト・ザ・バンド」やブラック・サバス「セブンス・スター」が良いと思うのだが、それらのアルバムよりも個性を発揮しているように思う。
とくに3曲目「What Is a Woman's Role」のようなAOR調の曲だと、知らずに聴いたら黒人だと思うようなボーカルスタイルだ。
彼らの黒人音楽風のアプローチというのは、ZEPやクラプトンのようなブルース・スタイルではなく、もっとファンクやリズム・アンド・ブルースなのだろう。
これはギターのメルも同様で、16分のコード・カッティングでファンキーに決めるスタイルがカッコいい。
決してテクニックに走ることなく、メロディアスでブルージィなギター・ソロを展開する人で、6曲目「Will Our Love End 」のソロなんて実に味わい深い。
もう一人デイブ、後のジューダス・プリーストではツイン・バス・ドラムを駆使した激しいメタル・ドラムを叩く人物だが、ここでは同一とは思えないほど大人しいスタイルだ。
しかし、その必要以上に自己主張しない、痒いところに手が届くようなドラミングは、この3ピースバンドによく合っていると思うのだった。
アルバム・ジャケットだけ見ると、まるでライブ・アルバムのようだが、普通にスタジオ・アルバムである。
全8曲のアルバム、CDタイムに慣れた現在の感覚からいくと、アルバムがすぐに終わってしまう気がするが、内容が良いので余計に短く感じられるアルバム、古き良き70年代のブリティッシュ・ロックなのだった。
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第80回名盤シリーズ
今はブルース・ギタリストとしても名高いギター職人ゲイリー・ムーアの作品だ。
LPレコード時代の邦題は「大いなる野望」。
(1980年作品)
私はゲイリー・ムーアが奏でるギターが好きだ。
好きなギタリストを5人上げよ、と言われたらいつもゲイリーが入る。
その骨太で熱いギターは、いかにも男のギターそのもので、いつ聴いても血沸き肉踊るのだった。
テクニックもスゴイ。
今でこそ彼より優れたテクニックのギタリストは大勢いるが、このアルバム発表の頃だとロックギタリストとしてはトップ・クラスだったと思う。
いつだってベキベキバキバキのハード・ピッキング、弦をぶち切る勢いのハードチョーキング、マシンガンのようなハード速弾き。
相当な指の筋力がないと弾ききれない開放弦を絡ませたトリル。
そして感情たっぷりの泣きのギター!
弾いてる本人までが泣いてるみたいな顔で弾くのだ。
音色から判断すると、おそらくけっこう太めのゲージを張っていると思うが、渾身の力でギターを弾き倒している感じがする。
とくにトリッキーなことをしてるわけでもないのに、すぐにゲイリーだと分かる個性的なギター・スタイルだ。
このアルバムはそんな彼の魅力が詰まった傑作で、どの曲からもゲイリーの魂の叫びのようなギターをたっぷり聴くことが出来る。
また、ソングライターとしても非凡な才能を見せるゲイリーだが、どれをとってもメロディアスで親しみやすいのがいい。
それまでのゲイリーはシン・リジィに在籍していたり、グレッグ・レイクと組んだり、もっと前はハードなジャズ・ロックをやっていたこともあった。
このハードロックという枠に収まりきらない彼のスタイルは、いろいろなタイプのミュージシャンと組むことにより、築き上げてきたのかもしれない。
それと、このアルバムでのボーカルは、ゲイリー本人である。
昔読んだ雑誌のインタビューによると、ゲイリーは自分の声が嫌いだと言っていたように思う。
だが、CDを聴く限り、なかなかソウルフルな歌いっぷりで、十分ボーカリストとして通じるし、充分うまいと思う。
ただ本人としては、ボーカルを誰かに任せて自分はギターに専念したいのかもしれないが。
このアルバム発表後、しばらくレコード会社とトラブルがあったり、ゴタゴタがあったようだが、優れたソロ・アルバムをいくつも発表している。
後に発表された「ダーティー・フィンガーズ」というアルバムも私のお気に入りだが、こちらはトラブルのせいでしばらく発表出来ずに眠っていた作品だったようだ。
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第79回名盤シリーズ
トレヴァー・ホーン・プロデュースによるABCのデビュー・アルバム「ルック・オブ・ラブ」
(1983年作品)
この辺りのアルバムは、完全リアルタイムなので、どうしても当時のことを思い出す。
デュラン・デュランやカルチャー・クラブといった、ニュー・ロマンティック音楽が大人気だった頃だ。
これらは第2次ブリティッシュ・インベイションとも言われていた。
当時の洋楽誌はこういったアーティストと、ハードなロック・バンドが同列に並んでおり、どちらにも興味をそそられたものである。
その点、今はハードロックを聴く人と、チャート物を聴く人は完全に2分してしまって、これはとても残念なことだと思う。
今このアルバムを聴くと、さすがに懐メロ感ただようサウンドで、今の若い人にはキツイだろう。
これもファッションと一緒で80年代という時代が生んだものだが、時代の先端を行こうとすればするほど後々それが古く感じてしまうのは仕方がないのかもしれない。
当時の同系列のバンド、例えばスパンダー・バレエ辺りもこういうサウンドだったが、流行が一巡するばまた感じ方もかわってくるかもしれない。
しかし、その複雑なベース・ラインや、シンプルだけどツボを押さえたドラム、ギターとキーボードの絡みなど、非常に凝ったアレンジで、聴き応えがある。
何より音に華がある。
このあたりのセンスは、元バグルス、イエスのトレヴァー・ホーンによるところが大きいだろう。
マーティン・フライのボーカルもこの華やかなサウンドによく合ってる。
私がとくに好き、というか懐かしく感じるのが8曲目の「オール・オブ・マイ・ハート(我が心の全てを)」。
やさしく甘いポップスで、このメロディ・ラインはとても美しい。
アレンジはシンプルでありながら大袈裟な部分もあり、キラキラと輝くようだ。
シングル・カットもされて、人気の「ルック・オブ・ラブ」「ポイズン・アロー」に継ぐ大ヒットとなっている。
そしてもう1曲、このアルバムから「ショウ・ミー」。
このアルバムの1曲目だが、映画音楽のようなイントロからダンス・ビートに変わるところがカッコイイ、大人のダンス・ポップだ。
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第78回名盤シリーズ
今回はジャーニーの大ベスト・セラー・アルバム「エスケイプ」。
(1981年作品)
私がジャーニーを知ったのは中3の頃、「フロンティアーズ」というアルバムからだ。
友人がLPを貸してくれたのだが、第一印象は良くなかった。
まず1曲目であり、ジャーニーの代表曲の一つである「セパレイト・ウェイズ」が気に入らない。
私にはただウルサイだけにしか聞こえず、その音の壁は息をするのが困難になるほど。
全体的にボーカルの声質が好みじゃないし、LPのライナーに書いてあった「世界一美しいハードロック」というコピーも気に入らなかった。
それでも、何度か繰り返し聴いてたら、そんなに悪くないかも?と感じるようになったのだが…。
私がジャーニーを見直すようになったのは、「ライブ・エナジー」というライブ・アルバムを聴いてからだ。
これは良かった。
曲がポップで自分好みだったし、アレンジや演奏もいい、ボーカルの声質も気にならなかった。
ここでようやく本題である「エスケイプ」である。
やはり「フロンティアーズ」「ライブ・エナジー」と同じ友人から借りたLPだが、1曲目の「ドント・ストップ・ビリービン」にノック・アウトされた。
この曲が良すぎて、好きすぎて、一生これのみを聴き続けてもけっして飽きることはないのでは?と感じるほどだった。
私にとってこのアルバムは、「ドント・ストップ・ビリービン」のためにあるようなものだ。
力強くメロディアスで、無駄のないアレンジ。
複雑な曲構成とか、凝ったアレンジでもないのに、何度聴いても飽きない奥深さ。
好きじゃなかったスティーブ・ペリーのボーカルも、この曲ではこの声以外にありえない気がする。
他にもいい曲、代表的な曲もあるものの、印象が薄くなってしまうのだった。
LPを貸してくれた友人に「1曲目が凄く良かった」と感想を述べたところ、彼は表情も変えず「全曲いいはずだ」と自分の価値観を押し付けてきた。
ジャーニー・ファンである彼にとっては、どの曲も輝く宝石のような名曲なのかもしれない。
もちろん彼はニール・ショーン(ジャーニーの看板ギタリスト)信者であり、彼を孤高のギタリストして神のように崇拝していた。
それは時に、マイケル・シェンカー・ファンの私と激しい議論になるのだった。
このアルバムによりスティーブ・ペリーのボーカリストとしての魅力に気づいた私は、彼のソロ・アルバムまで買い求めるのだが、そこに自分の期待するサウンドはなかった。
あくまでも「ジャーニーのスティーブ・ペリー」が良かったのかも知れない。
ちなみに再結成後のアルバムはまだ聴いていない。
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第77回名盤シリーズ
今回は英国プログレ・バンドUKの1stアルバム「UK」だ。(1977年作品)
一般的には2ndアルバムや日本公演のライブが人気のようだが、私はUKといえばこのアルバムである。
私がUKを知ったのは、キング・クリムゾンを一通り聴いたあとだったので、それほど昔ではない。
ジョン・ウェットンとビル・ブラッフォードという「太陽と戦慄」時代のクリムゾンのリズム隊、ギターはアラン・ホールズワース。
キーボード兼ヴァイオリンは、エディ・ジョブスンで、私はUK以外では彼の活躍を知らない。
ウェットンのソロ・ライブやエイジアのライブでも演奏されることがある「ランデヴー6:02」や「イン・ザ・デッド・オブ・ナイト」が代表曲とされる。
当時スーパー・バンドと言われたバンドだが、このメンバーで録音されたのは1枚だけだ。
プログレの様式美にそって作られた楽曲は、変拍子リズムで組曲風の長い曲をスーパー・テクニックで演奏するというもの。
ときにはエレキ・ヴァイオリンを駆使し、変体的なギター・ソロとリズム、しかし歌メロはポップで親しみやすくといったコンセプトだったようだ。
プログレ本来の「先進的であろうとする精神性」は薄く、クリムゾンやイエス、ELPらが築き上げた土台からは出ていない。
今でいうドリーム・シアターのコンセプトに近いだろう。
私はこれを聴くと、今や孤高のギタリストといったイメージのホールズワースが、ウェットンのバックでバッキングをしてるのに違和感を感じる。
これだけで、もうこのバンドは長続きはしない気がするのだ。
それに、本当はジャズがやりたいブラッフォード、もっとポップな歌物がやりたいウェットン、たった1枚だがこの4人が共同作業した奇跡の1枚とも言えるアルバムである。
そんなギリギリのアンサンブルが楽しめる1枚で、とくに1曲目「イン・ザ・デッド・オブ・ナイト」は4人の持ち味が上手いバランスで保たれていると感じる。
この当時のライブ演奏を聴くと、この複雑な楽曲をキッチリと、しかしライブならではの良い意味での荒さも含んだ演奏している。
面白いのは、メンバー・チェンジ後に発表された2ndアルバムの収録曲をこのメンバーで演奏していることと、ブラッフォード脱退後の彼のバンドで演奏される曲がこのメンバーで演奏されていることだ。
前者は後のエイジアに繋がるポップ・プログレ、後者はインストのジャズ・ロック風味で、ウェットン、ジョブスンのポップ、ロック志向組とブラッフォード、ホールズワースのジャズ志向組に真っ二つに分かれてるのだ。
しかし、後期UKとも、バンド「ブラッフォード」とも違う、このメンバーならではの熱い演奏をしていて、このまま2ndアルバムを作って欲しかった気がするのだった。
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