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洋楽名盤紹介と日々の雑談を書いてます
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歌詞についての考察シリーズ、今日は最終回。
文学とロックについてです。
邦楽界において、日本文学とロックの融合は古くから行われていたようですが、私は日本の古いロックについては詳しくないので、自分の知ってる範囲(90年以降)だけで書きたいと思います。

エレファントカシマシに見られる太宰治や森鴎外からの影響、陰陽座に見られる古典からの影響についてご存知の方も多いと思いますが、最も露骨に小説から直接引用しているバンドといえば人間椅子がその筆頭でしょう。
江戸川乱歩、横溝正史など古典ミステリーと太宰治の影響がモロに出ていて、それをブラック・サバス、キング・クリムゾン直系のヘヴィ・ロックに乗せて演奏するスタイル。

中でも傑作だといえる曲を紹介しましょう。
「芋虫」です。

江戸川乱歩の同名小説からヒントを得た歌詞内容です。

まず小説「芋虫」について。

戦争で両手、両足、聴力を失い、発声すら出来ない夫を持つ妻の話。
奇跡的に命だけは取り留めたものの、あまりに豹変してしまった夫を、人目の付かない離れ座敷に隠すように住まわせる妻。
人は嫌な顔一つ見せず献身的に世話をする妻を、今の世の美談として褒め称えるものの、それを素直に受け入れることが出来ません。
傷が塞がった夫は、ただ性欲だけが生きがいになり、妻もまた、この物言わぬ肉塊のような夫を性の玩具としてセックスに溺れるのです。
五体満足な妻と、自分では何一つ出来ない夫。
人前では貞節な妻が、やがてサディスティックな感情が芽生え、性の奴隷のように夫を扱うようになります。
妻は、自分でも信じられないくらい痴態をさらし、気が狂ったように快楽にはまるのですが、やがて平常にもどったとき、夫の数少ない正常な部分、そのつぶらで純真な視線に耐えられなくなるのです。
そして、ついに夫の両目を潰してしまいます。
そして後悔、涙を流しながら、夫の胸に指で「ユルシテ」と書きます。
取り返しのつかぬ罪業と救われぬ悲愴、ただ人が見たくて、世の常の姿を備えた人間が見たくて、家を飛び出します。
夜、再び家に戻ると、夫の姿がありません。
口で鉛筆をくわえて書いたと思われる文字「ユルス」、やがて、庭の古井戸にトボンと鈍い水音が…。

この悲しすぎる夫婦の物語を、夫の目線から描いたのが、この曲です。
夫は妻の苦しみがわかっているのです。
こんな自分をここまで生かせてくれたことに感謝し、そして夫として肉体的に妻を満足させることが出来たことに喜び、しかし自分の存在のせいで妻を苦しめている。
自分はむさぼるだけの芋虫、決して成虫になることは出来ない、ただ落ちていくだけ…


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» 無題
この曲はどこかで聴いたことがある気がするのですが、詩の内容がこういう意味だとは知りませんでした。
曲はかっこいいですね。

話はズレますが、寺島しのぶさん主演の「キャタピラー」という映画も、夫が戦争で四肢を失い、、、という内容ですね。観てませんが。。
ひらぱ 2010/11/28(Sun)17:03:05 編集
» キャタピラー
ひらぱさん、こんばんは!
この曲、実は以前にもここで取り上げたことがあります。
そのときは、歌詞がどうのではなく、カッコいい日本のロックとしてですが。
イントロは物悲しい雰囲気ですが、後半はハードに盛り上がってかっこいいですね。

寺島しのぶさん主演の「キャタピラー」は、まさにこの「芋虫」が元になってる物語です。
最初はそのまま「芋虫」という題名だったそうですが、いろいろ著作権とかの絡みで、題名を変更したようですね。
興味はあるのですが、乱歩関連の映像化ってほとんど失敗してるので、これもただただエログロなだけで、原作の淡々とした悲しみとおかしみが表現されてない恐れがあります。
なので、よほど評価が高くない限り見ないかも。
にゅーめん 2010/11/28(Sun)17:48:47 編集
» 人間椅子
バンド名から既にいけてますよね~
そして演奏力♪

コピーバンドとしても素晴らしい演奏ですし

息の長いバンドなんで
今の時代にも評価されて欲しいですね。
ポール森屋 2010/11/28(Sun)22:29:34 編集
» 実力派バンド
ポールさん、こんばんは!
イカ天出身バンドですが、もう10年以上になりますね。
彼らの演奏力は相当なもので、この確かな技術が個性的な楽曲を支えていて、オンリーワンな存在になってるんだと思います。

そうそう、彼らはコピーも上手ですよね。
youtubeでブラックサバスやキング・クリムゾン、のコピーが聴けますが、ほぼオリジナルの演奏をコピーしていて安心して聴けます。
彼らのやってるのは、カバーやトリビュートというより、アマチュアイズムの感じるコピーなんですよね。

なかなかマイノリティなバンドですが、確実に支持されているので、この先も末永くやって欲しいです。
にゅーめん 2010/11/28(Sun)22:55:40 編集
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