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久しぶりに奥田英朗を読んだ。
昨年の「家日和」以来だから約1年ぶりだ。
奥田英朗といえば、ドクター伊良部シリーズなどのコメディものや、近日映画化されるガールなど軽い短編のイメージが強いが、今回は久々のシリアスなサスペンスもの。
名作といわれる「最悪」や「邪魔」が読み応えたっぷりの傑作だったので、読む前から期待が高まる。
時代は昭和39年。
オリンピックの開催を控えた東京である。
昭和の象徴ともいうべきこの一大イベントを、警察、マスコミ、一般のOL、肉体労働者、そしてテロリストの視線から見据えたもので、まだまだ貧富の格差が激しかったこの時代の裏側を垣間見ることが出来た。
ここで面白いのは、表側の人物(警察、マスコミ、OL)の時系列と、犯人側の時系列が異なっていることだ。
事件が発生し(まず結果があり)、それから犯人側の視点に映る(種明かしが行われる)が繰り返され、少しずつ時系列が縮まっていき、やがて一致する。
そしてこれが一番大事なところなのだが、読者は本来凶悪犯であるテロリスト側を応援してしまうように物語が進行していくのである。
この辺りの感覚はいかにも奥田氏らしいところで、他にもビートルズ、左翼学生、格差社会など、奥田ワールド満載だ。
さらに登場人物、皆個性的で味のある人物ばかりなのだが、とくにスリ師の村田なんて本当に憎めない人物像に仕上がっている。
これだけハードな内容なのに、ビートルズファンのOLの話になると、とたんにコメディタッチが顔を出すのも奥田作品の味わい深さが出ている気がする。
また、殺人シーンは一回だけ登場するが、ここも非常にくだけた雰囲気で、本来最もシリアスになるところが、そうならないのも面白い。
文庫本で上下巻、少し長いがはまるといっきに読めるオススメの作品。
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