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洋楽名盤紹介と日々の雑談を書いてます
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ノーメイク時代のキッスを支えたミュージシャンたち

第4回エリック・カーと「ホット・イン・ザ・シェイド」



この15作目のアルバムは、オリジナル・メンバー、ピーター・クリス脱退後のKISSを支えてきたドラマー、エリック・カーの遺作となった。
ピーターがKISSのドラマーとしての情熱を失った頃、アントン・フィグなどのドラマーが代役を務めたが、正式なドラマーのオーディションは別に進められたようだ。
最初に2代目KISSのドラマーの地位を手に入れたのは、後にレインボーなどで活躍するボブ・ロンディネリ。
しかし、口の軽い彼はトップ・シークレットであるはずのこの話を周囲に漏らしてしまい、クビになる。
そして、次に選ばれたのが、エリック・カーだ。

彼のドラム・スタイルは、一言で言うと「重くて派手」だ。
と言っても無闇やたらと叩きまくるのではなく、フィルイン時に目立つような叩きかたをしていると思う。
また、最近のメタル系ドラマーのように常にツー・バスを連打するのではなく、曲に応じてここぞという時と、ドラム・ソロの時しか使っていない。

それと、彼のドラム・セットは80年代らしく、最もタムの数が多い部類に入るだろう。
それらは主にドラム・ソロの時に使われるのだが、様々なタムをメロディアスに叩く様は、退屈になりがちなソロ・タイムを華麗に彩るものだ。
また、70年代のKISSクラシックスも彼が叩くと80年代的になり、よりパワフルな楽曲に生まれ変わる。
とくにオリジナルよりもテンポを上げて、ツーバスを効果的に用いて曲を引き立たせるあたりは、流石と思わせるものだ。



さて、このアルバムだが、曲数が多すぎて少し散漫な印象もあるが、全曲クオリティが高い良盤だと思う。

今もライブで取り上げられることもある「フォーエバー」は、このアルバムの代表曲だろう。
また「ハイド・ユア・ハート」のように、ポール節全開のメロディアス・ハードが目立つアルバムだ。
そして、このアルバムに収録されたエリック・カーの作品「リトル・シーザー」。
ライブではすでにお馴染みだったエリックのボーカルだが、スタジオでのオリジナル曲はこれが初めてである(例外として、エリックが歌うピーターの名曲ベスもあるが)。
15曲も入ったアルバムの後半にサラッと入っているので、埋もれてしまっているのは残念だが。

ドラマーとしてのエリックの実力が発揮されてるのが、最後の曲「ブーメラン」だろう。
最後の最後に叩きまくっており、珍しくツーバス連打で迫力あるプレイを聞かせてくれる。
エリックにとっての生涯最後のアルバム、最後にオリジナル・ボーカル曲と、ドラマーとしての意地を見せる曲が存在するのだった。

再びヘヴィなサウンドに戻ったこのアルバムを引っさげて、彼らはツアーに出る。
しかしこの頃すでにエリックの体は病魔に侵されていた。
心臓に悪性腫瘍が発見されたのは1991年の2月。
その後病魔と闘い続けたが、11月24日ついに力尽きて天国へ旅立ったのだった。


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第3回ブルース・キューリックと「クレイジー・ナイト」



前任ギタリストが奇病のため、代替ギタリストとしてステージに立ったブルース・キューリックが、そのまま新ギタリストになる。
アルバム「アサイラム」発表後、ツアーも行い、それなりに反響を得るのだが、70年代の黄金期の勢いには程遠く、再びKISSは迷いはじめる。

そのままメタル路線を突き進むのかと思いきや、今度はヴァン・ヘイレンを意識したような路線でやってきたのだ。
どんなギターもそつなくこなす、それが可能なのが、ブルース・キューリックというギタリストなのだった。



個性豊かなエースやヴィニーと違い、やや器用貧乏なところのあるブルース。
彼はすごく上手い、良くも悪くも一流スタジオ・ミュージシャンのようだ。
だから何でも弾ける。
もちろん、ヴァン・ヘイレンみたいなギターを弾けといわれれば、難なくこなす。
ボン・ジョビみたいなギターを弾けと言われれば、問題なく弾く。
決して目立とうとはせず、いつもポール、ジーンの裏方に徹しているのだが、それが長年KISSを支えたわりに、人気が薄いところなんだろう。
おそらく、人間としてはすごくいい人だと思う。

このアルバムは隠れた人気アルバムだと言われている。
個人的にはそれほど優れたアルバムとは思わないが。
前作「アサイラム」の方が好きなのだが、ブルースのギター・スタイルという点で、あえてこちらを選んだ。
楽曲的には、ポールが活躍していて、なかなかのメロディアス・ハード・ロック・アルバムに仕上がっている。

ブルースの凄さがよくわかるのが、4曲目「ノー・ノー・ノー」だ。
出だしから圧倒される凄まじさ。
これを聴くとブルースってやはり上手いんだなと痛感する。
ヴァン・ヘイレンを意識してると思うのだが、俺達だって本気になればこれくらい出来るんだ、と言ってる気がする。


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第2回マーク・セント・ジョンと「アニマライズ」



前任ギタリスト、ヴィニー・ヴィンセントはツアー終了と共に脱退。
替わりに入ったのは、マーク・セント・ジョンという人物。

彼のギター・テクニックはヴィニーと比べても決して劣らない、80年代的スーパー・ギタリストだ。
ギター・スタイルはアームを積極的に利用するタイプと言えるかもしれない。
もちろん速弾きも得意分野で、エースでは絶対に弾かないようなテクニカルな超速弾きをあっさりと決める。
どちらかというとハンマリング・プリングを多用するタイプで、トリル+アームが得意技のようだ。
ただし、エースやヴィニーと違い作曲面での貢献はなかったようだが。



しかし、これで順風満帆とはいかず、またしても危機が訪れる。
マークはレイターズ・シンドロームという奇病に侵され、手が動かなくなってしまったのだった。
アルバムのレコーディングが終了して、ツアーに出かけるのだが、すぐにライブが出来ない状態に陥り、慌てて代替ギタリストをツアーに動向させる。
選ばれたのは、後にキッスのギタリストになるブルース・キューリックだ。
調子の良い日はなんとかマークがステージに立つこともあったようだが、そんな不安定な状況が長続きするはずもなく、脱退することになった。

そんなマークの唯一のKISS参加作品が、この「アニマライズ」である。
このアルバムの代表曲と言えば、ライブの定番曲「へヴンズ・オン・ファイヤー」だろう。
この曲は70年代KISSを彷彿させる、ロックンロール風の曲だ。

しかし、このアルバム、そしてこの時期っぽいのは1曲目「アイヴ・ハド・イナフ」などのハードな曲だと思う。
かなりヘヴィ・メタルしてて、ハード・ドライヴィングなナンバーだ。
ギター・ソロは弾きまくりタイプで、とにかく熱い。

シングルにもなった「スリル・イン・ザ・ナイト」も傑曲だが、ジーンが歌う「ホワイル・ザ・シティ・スリープス」が個人的に好きだ。
この曲のリフも今までのKISSにはなかったタイプで、80年代LAメタルに多いミディアム・テンポのカッコイイ曲に仕上がっている。


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第1回ヴィニー・ヴィンセントと「リック・イット・アップ」



ここでのギタリストはヴィニー・ヴィンセントだ。
彼はすでに前作「クリーチャーズ・オブ・ザ・ナイト」の大半でギターを弾いており、曲作りもしている。
彼はギターの腕前、作曲力など相当な実力を持っているにもかかわらず、ジーン・シモンズとポール・スタンレーから嫌われて、このアルバム製作後、とりあえずツアーだけはこなすのだが、その後バンドを辞めている。
ギター・スタイルとしては、硬質な音色で、マシンガン・ピッキングによる速弾きと、派手なチョーキング、チョーキング+アームが印象的な80年代的ギタリストだ。



彼がジーンとポールという大御所2人に嫌われた原因としては、オリジナルメンバーであるエース・フレイリーのフレーズを弾かない、新入りなのに意見が多い、それとギャラの問題だと言われている。
しかし、アルバム製作において才能を発揮していることには変わりなく、彼の直接かかわった2枚のアルバムの出来は素晴らしいものだ。

このアルバムは、全体的にハードでメタリックな印象がある。
メイク時代のアルバム「ダイナスティ」以降、ポップ路線に走ったり、コンセプト・アルバム「エルダー」を作ったりと迷っていた時期があったが、前作からのメタル路線に落ち着いたようだ。
おそらく、イギリスで巻き起こったニュー・ウェイブ・オブ・ブリティッシュ・ヘヴィ・メタル(NWOBHM)の影響だろう。
それがとくに顕著に現れているのが、4曲目「ヤング・アンド・ウェイステッド」や5曲目「ギミー・モア」、8曲目「フィッツ・ライク・ア・グルーヴ」といったハードナンバーだろう。
これらの曲は、70年代のKISSにはなかったタイプだ。

こういった路線を可能にしたのが、やはり新しく加入したドラムのエリック・カーとヴィニーの力が大きいと思う。
とくに「ヤング~」は、リフといい、重いけどグルーヴ感溢れるリズムといい、この時期のKISSを代表する曲だ。
ライブでは、エリック・カーのハスキー・ボーカルがカッコイイ曲でもある(アルバム・ヴァージョンはジーンのボーカル)。
またこの曲のギターは、ヴィニーの硬質なプレイの良さが発揮されている。

それら以外の曲では、ポールの活躍が目立っているように感じる。
1曲目「エキサイター」はポールらしい、メロディアスでハードな曲。
当時のライブのセットリストにあまり入ってないのは何故だろう。

それと7曲目「ア・ミリオン・トゥ・ワン」。
哀愁のメロディ、バックで流れるアルペジオ、まさに隠れた名曲だ。
自身のソロツアーでは、この曲をやってるようだが、是非キッスとしてもやってもらいたい。

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