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洋楽名盤紹介と日々の雑談を書いてます
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司馬遼太郎氏著書の明治初期の政治闘争、内乱を描いた全10巻の長編小説「翔ぶが如く」。
約2ヶ月かかって読みました。
まるで一つの長い旅が終わったような、充実感と達成感があります。

読みやすい作品の多い司馬氏の中で、この作品は少々敷居が高いようで、途中で挫折する人もいるとのこと。
原因としては
・誰が主人公かわかりにくい(というより、この時代そのものが主人公かも)
・政治のやり取りが多い
・登場人物が多い(その生い立ちまで説明される人物だけでも100人を超える)
・クライマックスである西南の役までが長い
などが上げられます。

そのため今回は、主な登場人物を、簡単なプロフィールと共にノートに書き込みながら読むというやり方で、進めていきました。
おかげで、長編小説にありがちな「あれ?この人誰だっけ?」というのがなく、理解がしやすかったです。
同じく氏の長編である「竜馬がゆく」などに比べ、娯楽性が少なく、ドキュメントタッチな印象をもつ作品。
それでも、私としては、それまで幕末関連の小説をよく読んでいたのと、この時代に興味があったので、楽しく読めました。

司馬さんの歴史小説は、他の作家に比べて、登場人物の説明が詳しく、ほとんど無名の人でも細かいエピソードなどを含めて判りやすく特徴を捉えています。
この物語も例外ではなく、あらゆる登場人物が、「よくここまで調べたものだ」と思うほどに丁寧に説明されています。

生まれたばかりの近代国家日本。
しかし江戸時代の気分が抜けない、慣れない、庶民の不安、士族の不満など、新しい国家体制には否定的な意見が多く、決して好調なスタートではありませんでした。

この長い物語を大きく見ると、
・征韓論争
・征台外交
・不平士族の反乱
・西南の役
の4つがポイントとなっていて、とくに熊本、鹿児島を舞台にした西南の役が物語りのクライマックスとして、詳細に描かれています。
第8巻から、旧薩摩藩を主力とする士族軍と、明治政府軍との武力衝突が始まりますが、巻末に九州地方の地図があって、それを見ながら読むと戦いの流れがよくわかります。

司馬氏の作品でよくある、戦術に対する分析はここでも詳しく解説されています。
なぜ旧幕時代に最強を誇った薩摩士族が敗れたのか?といったところに関して、「たら、れば」的な分析をあらゆる方向から検証しています。
「木を見て森を見ず」という言葉がありますが、結局、目先のことばかり考えて、全体象を見ていなかったのが最もな原因だったようです。
なぜ大局的な見地が出来なかったのか?
「薩摩武士的価値観」が大きく影響していて、良くも悪くも「典型的なサムライ」だったわけです。
つまり
「堂々と真正面から全力で体当たりしてこそ、武士である。戦略を立てたり、奇術を使うのは臆病者のすることなり。」
まさに翔ぶが如く舞い、翔ぶが如く戦うのでした。

そんな個々の武勇に頼る戦闘も、熊本、田原坂での激戦に敗れてからは考えを改めざるを得なくなります。
しかし時すでに遅し、薩摩軍は退却し、人吉、豊後と敗戦を重ね、ついに城山の戦いにて壊滅するのでした。

乱の末期、薩摩士族軍の幹部、桐野少将はこういったと伝えられます。
「見よ、この政府軍の勇姿を。これで欧米列強と互角の勝負が出来る。」
つまり、これで自分たちは安心して死ぬことが出来る、俺たちもよく戦ったが、明治政府も強くなったじゃないか、と相手を称えてるわけです。
このダンディズム、まさにラストサムライですね。

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