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第85回名盤シリーズ
今回はかつてロッド・スチュワートやロン・ウッドが在籍していたバンド、フェイセズから「馬の耳に念仏」。
(1971年作品)
スモール・フェイセズからスティーブ・マリオットが抜けて、代わりに入ったのがジェフ・ベック・グループの二人。
後にロック界の超大物となるロッド・スチュワートとロン・ウッドなのだが、低身長ばかりだったメンバーから長身が加わったのでバンド名から「スモール」が取れたようだ。
私はスモール・フェイセズの音楽を聴いたことがないので、J.B.Gの2人が入ることでどうサウンドが変わったのかはわからないが、とにかくルーズでかっこいいブリティッシュ・ロックである。
このアルバムの特徴は、ロッドとロニー・レインが1曲づつ交代でボーカルをとってることだ。
ハスキーで力強いロッドと、線が細くやさしいロニーという、まったく異なる声質の2人、それでもどちらを聴いてもブリティッシュな香りがプンプン漂う。
最近はこういうルーズで、薄汚れた雰囲気のロックンロールを演奏するバンドってのは少なくなった。
決してヘタではない、良い意味での荒さがあり、良い意味でのいい加減さがあるのだ。
とくにロン・ウッドのギターがルーズだが勢いのある味わい深いプレイをしている。
後のストーンズに入ってからよりも、若さ溢れるプレイをしているような気がするのだ。
古くからのフェイセズのファンの方は、このアルバムの肝はロッドやロンではなく、ロニー(ロから始まる人ばかりでややこしい)だという。
そうなのかもしれないが、私としてはやはりロッドのボーカルのほうが魅力的に聞こえる。
私は3曲目「ラヴ・リヴズ・ヒア」がとくに好きなのだが、ここでのロッドのボーカルはソウルフルでとてもいいと思うのだ。
また、イアン・マクレガンのピアノも素晴らしい。
このアルバムからのヒット曲は「ステイ・ウィズ・ミー」、イントロがかっこいいロックンロールナンバーで、パーティー・バンド的なノリの良さがある。
チャック・ベリーのカバー曲「メンフィス」、やる気ないのか?といいたいほど気だるい演奏だが、これこそが彼らの持ち味とも言えるもので、このノリには中毒性があるように思うのだった。
この後バンドは売れてくると、ロッドのスター性が注目されるようになり、バンド名も「ロッド・スチュアート&フェイセズ」になってしまう。
でもこうやって一人の人間だけクローズ・アップされるようになると、メンバー間がギクシャクしてくるのも当然のこと、70年代半ばには解散してしまうのだった。
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